
夏の女
夢二は、版画の作品も数多く手がけています。
版画には、自身の著作本の付録として折り込まれたり『婦人グラフ』の表紙や挿絵などとしてメディアに流通していたものの他に、夢二のデザインした日用品や小物を扱うショップで販売された、独立した作品としての木版画がありました。夢二の木版画には、東京日本橋の「港屋」を版元とする「みなとや版」と、大阪の「柳屋」を版元とする「やなぎや版」があります。夢二は、制作にあたっては自身の納得がいくまで摺師や彫師に注文をつけ、江戸時代の浮世絵のように、歌舞伎などを題材に役者の姿を明確な線と鮮やかな色を用い描きました。
ここで紹介する大正中期の木版画「夏の女」は、芝居の登場人物を描いた木版画とは少し趣が異なり、描かれているのは身近にいそうな生身の女性です。さまようような視線や、肩をすくめ体をこわばらせた姿から、裸の女性のさまざまな感情がリアルに伝わってきます。しかし、頼りない線のぎこちない描写はこのポーズをどことなく滑稽なものにし、絵から伝わってくる緊張を解いてくれます。この日本髪の女性には媚びた感じでなく控え目な色香が匂います。「夏の女」の意匠は、日本の夏には欠かせない団扇のデザインとしても用いられました。
常に庶民の傍にあって、人々の日常生活の一端を豊かに彩っていた夢二芸術。夢二の斬新なセンスと遊び心があふれる一点です。
夢二郷土美術館
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